白衣を棄てた話

今日、白衣を捨てた。

 

小学校低学年の頃にNHK教育古典力学の特集を見て「してんりきてんさよーてん」とか話していたのが最初だと、親から聞いた。

理科が嫌いではなかったし、サイエンスキャンプにも行かせてもらった。牛の眼球の解剖が一番印象に残っている。

中学校では案の定中二病に罹患した。読んでもいないのにア理科みたいな方向に傾倒した黒歴史をつむいだ。

中学3年だったか、なにかの機会で、誰かに名著・ガリレオの指を買ってもらった。苦労しても第一章とちょっとしか読めなかったけど、科学の発展には沢山の人が情熱を注ぎ、間違いを重ね、時には弾圧もされたことを知った。本は今でも大切に持っている。

 

とにかく白衣を着て実験をしたかったので、地元の高専に入った。もちろん化学科一択。

一年生は何もかもが新鮮だった。濃硫酸の希釈熱を甘く考えていたら火傷しかけた。

二年生は分析化学が入った。EDTAがよく分からなかったと思う。あと、せんべい屋でバイトしてPCを買った。最初に入れ(てもらっ)たソフトはBCC32だった。空いた時間でCに入門したけどポインタで詰んだ。

三年生では、校舎工事のせいで、一年分の実験である無機化学実験と物理化学実験が前期で被って死にかけた記憶がある。あと組み込みを始めた。ポインタを乗り越えたのもこのへん。

四年生では化学工学実験と遺伝子工学実験をやった。自分がALDHⅡ欠損である事が判明した。ついでに、C++に手を出し始めた。

値下がりしていたWarren有機化学の原著が面白かったので、五年生では有機合成系の研究室に入った。アクロメリン酸類縁体の合成研究を行った。有機Li化合物の扱いに慣れていなくて、薬傷を負いそうになったこともあった。mmolオーダーでの合成だったけど、コツコツやって30 mgくらいキリの良い所まで作れたと思う。でも3.11で冷蔵庫ごと吹っ飛んでどっかに行った。

 

五年生の座学でやった精留プロセス設計演習が面白かったので、大学三年次の化学工学科に編入した。マジの化学工学は本当に面白かった。撹拌とかに命をかけている人がたくさんいるワンダーランドだった。あとVPSを契約した。webに手を出し始める。

そのweb趣味が高じて今の会社に内定した。四年生では、無機材料の研究室に入った。

そして今に至る。

この一年間はほんとうに大変だった。でも過ぎてみればあっという間だったと思う。

卒業後は化学実験に従事することが無く、ボロボロになってしまったため、白衣を捨てたに過ぎない。

 

思い返してみれば、科学の中の化学でも、色々と渡り歩いて来てしまった。結局どの分野での専門家にもなれず、中途半端なままChemistryを離れる。

もちろん、ChemistryもChemical Engineeringも大好きだった。とても魅力的な分野だと思っている。

これは運の問題だったのかもしれない。今の会社が落ちたらどこかの化学プラントに行くつもりだった。

 

実際、化学を"棄てる"のかと言われれば、そうではない。大変とは思ったがつまらないとは思わなかった。ただ、仕事が化学でない、化学に興味を持った一般人になるだけ。

これからはプログラマとして生きていくので、ITにはもちろん集中する。

しかし白衣に袖を通した7年間は、絶対に無駄ではなかった。

 

ということで白衣さん、長い間ありがとうございました。